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キャリアをデザインしない勇気

2025 8/09
ライフスタイル
2025年8月8日2025年8月9日
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設計図への違和感

「5年後、10年後のキャリアビジョンを教えてください」

こんな質問をされるたび、あるいは耳にするたび、僕はなんとも言えない違和感を覚えます。まるで人生が建築物でもあるかのように、緻密な設計図を描くことが良いことだとされていることへの気持ち悪さ。

人生とは本当にそのようなものなのでしょうか。

振り返ってみると、本当に力のある人というのは、必ずしもそんな設計図通りに歩んできたわけではないようです。むしろ、予想もしなかった道に迷い込み、時には全く違う世界に飛び込み、その場その場で目の前のことに没頭してきた人の方が、結果として深い力を身につけているみたいです。

そんな人をいっぱい見てきました。

もちろん、僕自身、官僚からコーチ、そして哲学塾の塾長、そこからまた先の世界へ、という道筋なんて予想できていませんでしたしね。

「都合の良い偶然」への期待

最近のキャリア論では、偶然の出会いやチャンスを積極的に求めることが推奨されるようですね。

  • 意図しなかったようなアサインが自分の可能性を開いたとか、
  • ふとしたきっかけで始めた副業が軌道に乗ったとか、
  • 偶然の出会いが転機となったとか、
  • 運良く巡り合った師によって人生が変わったとか、

そんな、思いがけない偶然から、キャリアを築いていくのだというわけです。

確かに一理あることでしょう。でも、これって、どこかで「プラスの偶発性」だけを狙い撃ちしようとしている節はないでしょうかね。

本当の偶然とは、もっと予測不能で、もっと混沌としたものじゃないかな。病気、失業、大切な人との別れ…。人生を変える出来事の多くは、実は「こんなはずじゃなかった」という状況の中で起こるものです。

美味しいところだけを狙って偶然を「活用」しようとする発想には、どこか現実に対する甘い見通しが潜んでいるのかもしれませんね。甘い期待が大きいほど、現実の厳しさは苦みとして感じられますから気をつけたいところです。

迷子になる価値

道に迷うことを、僕たちはどうしてもネガティブに捉えがちです。「時間をロスしている」「うまく経験を積めていない」。事実としてはそれはそうなんだけど、解釈は本当にそれだけなんでしょうかね?

迷子になったからこそ発見できる景色があるんじゃないでしょうか。迷子になったからこそ身につけられる「強さ」や「ふてぶてしさ」があるんじゃないでしょうか。迷子になったからこそ磨かれる「信念」があるのではないでしょうかね?

一本道を真っ直ぐ歩いていては、道端の直売所で売っている本当においしいフルーツに気づけないかもしれません。もしかしたら、それは、樹上で完熟した「取れたて」かもしれないのに。

脇道に逸れて、時には藪の中を彷徨うからこそ、突然視界が開けた思いがけない景色に巡り会えるかもしれませんね。崖の上で道が行き止まりだからこそ、そこから見える景色は信じられないような絶景となります。

キャリアも同じじゃないでしょうかね。専門分野から外れてしまった時間、「これで食べていけるのか」と不安になった経験、全く違う業界の人たちとの出会い。そういう「無駄」に見える時間こそが、後になって自分だけの価値を生み出していくものでしょう。

計画依存症

また、計画通りに歩んできた人ほど、実は脆い一面を抱えがちです。いつも「正解」を求め、状況をコントロールし、実際に人生を「正しく」歩いてきた人は、想定外の事態に直面した時、どうしていいかわからなくなってしまいます。計画という杖を失った途端、一歩も前に進めなくなってしまうんですね。

この現象は、エリートと呼ばれる人たちの中でよく見られる現象です。受験、就職、昇進…すべてを計画通りに進めてきたからこそ、「計画から外れること」への恐怖が人一倍強い。状況をコントロールできなくなることへの嫌悪が心の奥に張り付いています。

計画通りにきた自己イメージの高さが抱く「無理なものは無理ッスね」って諦められない弱さ。しかし、その恐怖こそが、彼ら/彼女らの可能性を狭めているとも言えます。

ロスト・コントロールを受け入れる力

現代は複雑な時代だと言われます。しかし、複雑さに対処するために必要なのは、より精密な計画ではなく「状況をコントロールできなくなることを受け入れる力」なのかもしれません。

異なる世界を渡り歩き、時には道を間違え、時には立ち往生した経験を持つ人は、この力を自然と身につけています。一つの視点に囚われず、動きつづけ、状況に応じて柔軟に対応できる。予想外の展開にも動じません。

これは、どんなに綿密な計画を立てても身につかない力でしょう。むしろ、計画から外れた時にこそ鍛えられる筋肉のようなものといえます。

直感という羅針盤

では、計画もビジョンも持たずに、どうやって人生の方向を見定めるのでしょうか。

答えは、直感にあります。

この場合の直感とは「Inspiration」ではなく「Intuition」。「Intuition」とは、外部からの刺激によるものではなく、心の内から湧き出てくる感覚です。

人間、頭で考えれば考えるほど、リスクばかりが見えてきます。データを集めれば集めるほど、動けなくなります。しかし、心の奥底で「これだ」と感じる瞬間があります。

ある程度考えた後は、その直感(Intuition)を信じて動く勇気。これが「キャリアをデザインしない勇気」の正体なんですね。

失敗の再定義

計画通りにいかないことを「失敗」と呼びます。しかし、本当にそれは失敗なのでしょうか。

僕自身が霞ヶ関で先が見えなくなったこと、それは確かに計画の破綻でした。しかし、その経験がなければ、今のコーチとしての仕事はありませんでした。人の心の痛みに共感する力も、複雑な状況を整理する視点も、あの時の経験から生まれています。

失敗とは、計画の破綻ではなく、新しい可能性への扉なのかもしれません。

水の哲学

老子は言いました。「上善如水」。「最も善なるものは水のようである」と。

水は決して一直線には流れません。岩があれば迂回し、谷があれば流れ落ち、時には地下に潜ります。しかし、最終的には必ず海にたどり着きます。

キャリアも水のようでありたいですね。障害があれば形を変え、状況に応じて進路を調整しながら、しかし確実に自分の向かうべき場所へと流れ続ける。

唯一無二の物語

誰かが作った「成功のテンプレート」に自分を当てはめる必要はありません。

大切なのは、自分の歩んできた道に「よし」と言えること。たとえそれがどんなに回り道に見えても、どんなに「むちゃくちゃ」に見えても、その道を歩んでいる自分に納得できること。

そうして紡がれた物語は、他の誰にも真似できない、あなただけの価値を持っています。

勇気の意味

「キャリアをデザインしない勇気」とは、不安に負けない勇気のことではありません。

不安を抱えながらも、それでも目の前のことに没頭する勇気。計画通りにいかない現実を受け入れる勇気。直感を信じて一歩を踏み出す勇気。

そんな小さな勇気の積み重ねが、結果として誰にも予想できなかった道を切り開いていきます。

エピローグ

人生は設計図通りには進みませんね。むしろ、設計図通りに進まないからこそ面白いんです。

予測不能な時代だからこそ、予測不能であることを受け入れる。計画できないからこそ、計画しない勇気を持つ。

その時、私たちは初めて、本当の意味で自由になれるのかもしれませんね。

あなたの人生という物語は、あなたにしか書けません。

そのことを信じて、今日もまた一歩を踏み出していきましょう。

追伸:

あなたの唯一無二のものがたりを紡ぐ価値観診断もやってみてくださいね。

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この記事を書いた人

山田 亨/Tony Yamadaのアバター 山田 亨/Tony Yamada

株式会社Flora Partners CEO/エグゼクティブコーチ/リベラルアーツ教育家。『Wines』主宰。

霞ヶ関の官僚として約12年勤務し退官。コネなし、人脈なしの全くのゼロから起業し実績を積む。

運の良さと様々なご縁に運ばれ、現在は多数の企業のプロジェクトに参画。経営者リーダー育成プログラムの統括コーチやエンタープライズ個社の経営人財開発プロセスなどを支援。

2025年4月まで東京美学倶楽部|哲学本部が主催する「哲学塾」の塾長をつとめる。

「おいしく・楽しく・見通しよく」をモットーに、東西の知恵を現代風にアレンジしながら、仕事や人生に活きるリベラルアーツをカジュアルにお届けすることをお役目としている。

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「視点が上がるという愛の実践」をパーパスとし、仕事と人生に活きるリベラルアーツをカジュアルにお届けするのがお役目です。
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